診療・検査案内

CT検査(Computed Tomography:コンピュータ断層診断装置)


CTは、X線発生装置を使って身体の断面を撮影する画像検査の一つです。
当院では独自のMJ式3断面診断法で撮像と読影をしています。


医療において、全身のどこでも、どの範囲でも広く高速に可視化できるコンピュータ断層(Computed Tomography,CT)は今の時代に欠かせない検査です。画質は高精細で空中分解能(組織緻密性表出能)が高く、個々の医用画像を構成する点と点の幅は0.5~1㎜と狭く、さまざまな病気の診断において、とても有益な情報が得られる画像検査法です。例えば、検査法の違いによるがん発見率では、大きさ2㎝未満の肺がんの場合、従来の胸部単純X線検査では21%しか検出できませんが、CTではその約5倍の感度で検出できます(参照:厚労省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/08/dl/s0819-3f.pdf)。これはCT検査でなければ早期がんが見つかりにくいことを示しています。また良質なCT検査には、専門的知識にもとづく撮像、画像処理が求められます。当院では熟練した放射線技師と専門医がCT検査に関わっています。早期がんが疑われた場合、その部位のスライス幅を狭く設定した高分解CT(high-resolution CT)を追加して病変がより鮮明になるよう拡大し再構成を行います。その他、Dynamic CT、3D-CTなど、専門性を有する画像処理と撮像は多岐に及んでいます。一方、CT検査の安全性については、検査精度と並行して個人単位の被曝線量を個々に記録、収集しています。病気の安全な検出には、病気の早期発見による利点と将来的な欠点の推量に熟練した専門医の関与が欠かせず、CT検査においても最も配慮されるべき課題となっています。検査後に大切なことは、例え一回だけの検査でも後で見直せるCT画像を半永久的に残しておくことです。それは病気の追跡に必要であり、そのためのシステムの開発と更新は欠かせません。当院では以前にCT検査を受けられた方の画像記録は1998年(平成10年)から個人別にすべて保存されており、瞬時に閲覧と比較が可能なPACS (Picture Archiving and Communication System,医療用画像管理システム)を構築しています。保存されたCT画像から、後に腹腔鏡手術などの治療が必要になった場合など、血管の3次元画像や胆嚢・総胆管の3次元画像等が役立つこともあり、気管支、消化管では仮想気管支鏡や仮想大腸カメラ等が有用になることもあります。

CT検査

CT装置 (Canon Aquilion Lightning)

頭部領域のCT画像(脳CTA)

胸部領域のCT画像(肺HR画像)

腹部領域のCT画像(3D画像)

症例:肺

肺について

肺は左右に1つずつあり、右肺は上葉・中葉・下葉の3つに、左肺は上葉・下葉の2つに分かれています。肺は呼吸によって身体の中に酸素を取りいれ二酸化炭素を排出する重要な役割をしています。呼吸をするとき、空気は口や鼻から咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)を経て気管を通り、気管支と呼ばれる左右の管に分かれ肺に入ります。気管支は主気管支、葉気管支、区域気管支と順次分岐して肺胞に至ります。肺胞で酸素を身体に取り入れ、炭酸ガスを排出します。

肺がんについて

気管支や肺胞から発生する悪性腫瘍の総称です。肺がんは進行が速く、比較的早期にリンパ節転移や遠隔転移を起こしやすいがんです。2022年がん統計の部位別死亡者数において男性は第1位、女性は大腸がんに次いで第2位です。

喫煙者ほど肺がんになりやすく、一般に B I (ブリンクマン係数:1日の本数x喫煙年数) が600以上の重喫煙者は肺がんの高危険群で非喫煙者の4~5倍と言われています。また非喫煙者でも周囲に流れるたばこの煙を吸う受動喫煙により発症リスクが高まることもわかっています。今後当分の間、肺がんは部位別がん死亡者数において増加してゆくことが予想されています。

非喫煙者の肺

BI:600の肺

BI:1200の肺

肺がんの種類について

肺がんには大きく分けて非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)と小細胞がんの2つの種類があります。肺がんは組織型の違いにより発生することが多く、部位、進行形式と速度、症状などが大きく異なります。非小細胞がんの中で最も発生頻度の高い腺がんは、肺の末梢に発生するがんの代表的なもので肺がん全体の約40~45%を占めます。非喫煙者の女性もかかる場合もあり、近年増加が著しいことが問題となっています。

腺がんは初期の病変ではすりガラス状陰影(pure ground-glass nodule :pure GGN)であることが多く、胸部レントゲン検査では発見が非常に難しく、高分解能CT(HRCT)が有用です。(下左図)

扁平上皮がんは比較的太い気道(気管支)に発生することが多いがんで、比較的頻度が高く、肺がん全体の25~30%を占めます。扁平上皮がんの主な原因は喫煙と考えられており、たばこの本数が多ければ多いほど、危険性は増加します。(下中図)

小細胞がんは非小細胞がんに比べて、発育が速く転移を起こしやすいことと、抗がん剤や放射線療法が非常に有効なことが特徴で、この点で他の肺がんとは治療上の対応が異なり、手術よりも抗がん剤の治療が主体になることの多い肺がんです(下右図)。

腺がん

扁平上皮がん

小細胞がん

肺がんの症状について

肺の末梢に発生する腺がんなどの早期肺がんでは無症状のことが多いです。進行すると喀痰や胸痛、背部痛、胸水貯留とそれに伴う呼吸困難などの症状が出現することがあります。肺門部に発生することが多い扁平上皮がんや小細胞がんでは咳や血痰、進行すると肺炎を引き起こすこともあります。さらに進行するとリンパ節や肝臓、脳、骨などに転移して声がかすれる、頭痛、嘔吐、麻痺、胸背部痛、体重減少などの症状が出現することもあります。

肺がんの検査について

低線量肺がんCTは、肺がんを検出する形態診断法として、現時点で最も有力な検査です。特に、早期肺がんや限局性のすりガラス状陰影においては、胸部単純レントゲン検査よりも低線量肺がんCT検査が最も有用です。

 [日本肺癌学会編:肺癌診療ガイドライン2023年版 より引用(一部改変)]

 胸部単純レントゲン検査                     低線量肺がんCT検査

胃カメラ検査・大腸カメラ検査


当院では、胃カメラと大腸カメラの同時検査を短時間で効率よく実施できるよう、発売から2年を経て内外でも高評価の新世代内視鏡システムOlympus EVIS X1を2台、Canon透視システムと組み合わせて配置しています。これにより内視鏡検査の精度は従来(当法人参考資料)より格段に高まり、内視鏡とモニタから得られる高分解能ハイビジョン(HD)画質による高精細画像が、より微細な粘膜変化を捉え、高精度の検査をお受けいただけます。また以前の狭帯域光観察(NBI : Narrow Band Imaging)も新たなNBIシステムに改善され、今まで発見し難かった早期病変の診断能も大巾に向上しています。一方、胃カメラ、大腸カメラの検査中に送気は不可欠です。この送気に用いる気体の多くは一般的に空気(room air)です。当院ではすべての検査に炭酸ガス(CO²)を使用しています。検査後のお腹の張りが早く軽減されるための選択です。検査後に、検査を受けられた方の不快感が弱まり、楽な検査につながります。楽に受けられる検査、つらくない検査のためのもう一つに、当院では検査に際して、一時的な鎮静剤使用を採択しています。これにより検査中の辛さは軽減され、将来的な検査に対する不安や心配なども少なくなります。癌死2位の大腸がん(年間約54,000人)や3位の胃がん(年間約40,000人)を早期に発見するには、内視鏡(カメラ)検査は欠かせず、何らの症状も無いうちから一定の間隔で受ける検診は健康管理上、とても大切で不可欠なことで適切な方法です。ただ、検査自体に対する不安や心配をお持ちの方は検査を受けられることへの躊躇につながり、ひいては癌死のリスクが高まります。楽に受けられる検査、つらくない検査、不安のない検査、そして短時間で高精度の胃と大腸の内視鏡(カメラ)検査を受検者の皆さまにご提供する、これらを当院での内視鏡検査における第一の志向として掲げています。

新世代内視鏡システム画像


内視鏡X線検査室

胃カメラ検査は、胃や食道、十二指腸のがんや潰瘍などを見つける検査です。

早期胃がん(通常モード)

早期胃がん(NBIモード)

症例:胃

胃について

胃は食道に続く嚢状の臓器で、食べたものを一時的に蓄えたり消化したりする働きをしており、食道から続く胃の入り口部分(噴門部)と十二指腸に続く部分(幽門部)、それ以外の部分(胃体部)から成っています。胃の壁は内側から粘膜(M)とその下の粘膜下層(固有筋層(SM))、その下の厚い筋層(MP)、一番外側の薄い膜(漿膜(SS))でできています。

噴門部

胃体部

幽門部

胃がんについて

日本では、年間に約156万人が亡くなり(2022年)、その約3人に1人ががんで亡くなっておられます。 その中でも胃がんは3番目に多いがん(2020年)です。 男性は約2.6万人、女性は約1.4万人が胃がんで亡くなり(2022年)、男性の約7.5万人、女性の約3.4万人が胃がんを患っておられます(2020年)。

 [厚生労働省:人口動態統計、国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターより引用]

胃がんは、早く発見されれば、とても治りやすいがんです。このことは、胃がんの検査法、特に内視鏡検査の普及率上昇により、罹患者(病気にかかる人)数が増加するなかにあっても、年々死亡者数が減少していることからも明らかです。そこには、検査精度の向上で、より早い時期の胃がんがみつかり、早期に治療されているという状況がうかがえます。このことは逆に胃がんで亡くなられた人々は、早期に発見されなかったためと言えなくもありません。

平素から、軽微な症状に気をつけ、刺激物などを避け、ピロリ菌の感染にも留意することが大切です。そして、少しでも気になった時は、できるだけ高い精度の検査、できれば内視鏡検査を受けるようにつとめてください。

早期胃がん

進行胃がん

胃がんの症状について

胃がんに特徴のある症状があるわけではありません。また早い時期の胃がんでは自覚症状がでることは少なく、検診などで指摘されることが多いです。心窩部(みぞおち)の不快な感覚や空腹時や食後の腹痛、異常な膨満感などがある場合には、胃の検査を受けることをおすすめします。

胃がんの検査について

胃がんの精査は主に上部消化管X線検査(胃透視)と上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)があります。当院では早期発見により有効な検査である内視鏡検査(胃カメラ)を主に行っています。 がんを疑う病変に対しては、内視鏡で観察しながら鉗子(かんし)と呼ばれる器具で病変の一部を採取(生検)して、顕微鏡による病理診断を行い、がんの有無を調べます。

症例:大腸

大腸について

小腸に続く管腔の臓器で、小腸に比べて2倍程度の太さがあり、長さは1.5m程度あります。大腸は盲腸および虫垂、結腸、直腸に分けられ、更に結腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。大腸では消化作用はほとんどなく、水分の吸収だけがさかんに行われています。

盲腸

結腸

直腸

大腸カメラ検査は、結腸や直腸のがんや潰瘍などを見つける検査です。

大腸がんについて

2020年がん統計の部位別死亡者数では男性では第2位、女性では第1位を占めています。(結腸のみでは男性が第5位、女性が第3位)大腸がんは早期の段階で発見できれば完治が可能とされていますが、現在検診にて行われている便潜血検査の精度や2次検診の受診をする人が少ないことが問題となっています。

当院では便潜血ではなく、下部消化管内視鏡検査と場合によっては治療も同時に行っています。検査中は鎮静剤や痛み止め等を使用し、可能な限り痛みを抑えるよう努めています。

また大腸がんは、大腸壁におけるがんの浸潤の深さ(深達度)が粘膜と粘膜下層にとどまるものを早期大腸がん、粘膜下層より深く浸潤するものを進行大腸がんに分類されます。

              [国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターより引用]

早期大腸がん

進行大腸がん

大腸がんの症状について

進行大腸がんでは、排便時の出血や腹部の膨満感、便秘などの症状がでますが、早期大腸がんでは自覚症状がでることは少なく、がんのできた場所によっても自覚症状が違います。便が細くなった、便意が残るなどいつもとは何となく違うといった症状を感じた場合には、検査を受けられることをおすすめします。

その他の検査

動脈硬化検査

心電計装置

血圧脈波検査装置(フクダ電子 VaSera VS-2500システム)

動脈硬化を予防するには、生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病)が危険因子であることから、これらの疾患を予防・治療することが重要です。

この血圧脈波検査装置では、「動脈の硬さの指標 CAVI(キャビィ)心臓(Cardio)から足首(Ankle)までの動脈(Vascular)の硬さの指標(Index)の略」と「下肢動脈の狭窄・閉塞の判断指標 ABI(エービーアイ)」の2つの指標を同時測定することが可能です。なかでもCAVIは、近年 “血圧に依存されない動脈硬化指標” として、その有用性が注目されています。

この血圧脈波検査装置は、 

  • 再現性が良い
  • 操作性が簡便である
  • 患者さまへの負担の少ない

動脈硬化スクリーニングツールです。

血圧脈波検査装置 VS-2500システム

本システムは、オシロメトリック法* により四肢に巻いたカフ* を用いて血圧を計測し、カフの加圧によりカフ容積脈波を計測します。

・心電図は、体表面に装着した心電図用電極と誘導コードにより入力された信号を増幅し表示および記録。

・心音は、心音マイクロホンにより計測。

・上記アナログ信号は、A/D 変換器によりデジタル化され、マイクロコンピュータ(CPU)により処理。

・下肢血管の血流障害の程度として、四肢の血圧、四肢の脈波、下肢上肢血圧比 ABI、足趾上肢血圧比TBI が計測。

・動脈の伸展性の程度として、脈波伝播速度(PWV)、各種学説から計算される各種心足首血管指数 CAVI が計測。

・多機能心電計システムは、12 誘導の心電図を記録すると共に、マイクロコンピュータによって心電図を計測と解析。

など、本システムは操作パネルで被検者情報を入力し、START キーを押すだけで、波形の取り込みから解析結果の出力までを自動的に行います。

*オシロメトリック法:非浸湿的方法により血圧を測定し、カフに空気を加圧して徐々に空気を排気するとき、動脈血管上のカフに生じる圧振動の大きさを圧センサーで感知・記録することで血圧を測定する方法。

*カフ:気管切開チューブや気管内チューブの先端についている風船状のもの。

◆主な特徴

【ACS 診断補助機能の動作原理】

ACS(Acute Coronary Syndrome)とは、不安定狭心症や急性心筋梗塞、心原性突然死を含む急性冠症候群のことであり、それを診断するための補助機能として、責任冠動脈の推測、2 次的に合成したドミナント波形からの記録や計測 、 2 次的に 合成し た連続波形 の表示や 記録(合成 18 誘導機能)、問診による情報もあわせた解析(問診機能)を行うことができます。

【精度管理サポート機能の動作原理】

本システムは、使用者が行う日常点検における心電図測定精度の管理をサポートするために、精度管理サポート機能を搭載しています。この機能では、計測値を自動で内部メモリに保存しファイル化したものを外部記憶媒体へ記憶させることができます。また、内部メモリに保存した内容を一覧表にしてレポート出力することもできます。

◆高血圧診療における血管機能検査と臥位血圧の有用性Coupling研究の新知見
        【座長】阿部 弘太朗 先生(九州大学大学院医学研究院 循環器内科学 教授)
        【演者】苅尾 七臣 先生(自治医科大学・内科学講座循環器内科学部門 教授)

【要約】CAVI+ABIの有用性に関する報告
 心血管リスクを有する高血圧外来患者・4716名を対象に平均5年間追跡した全国Coupling研究ではCAVIは血圧や他のリスク因子とは独立して心血管イベントのリスク予測因子であった。加えて、新たな知見が2つ見つかった(Hypertension Res. 2024,10月高血圧学会同時掲載)。

CAVIとは独立して、ABIは1.1未満からリスクが増大し、CAVI増加(>8)と相加的にリスクが増大した。さらにコントロール不良の臥位血圧が心血管イベントのリスク因子となった。現在の高血圧診療では、診察室血圧も家庭血圧も座位血圧を測定し、降圧薬の用量調整を行う。しかし、今回のCoupling研究の新知見からは、座位血圧の測定だけの高血圧診療では見過ごす循環器イベントのリスクがあることが伺える。2023年にはヨーロッパ高血圧学会・ESHが、2024年9月にはヨーロッパ心臓病学会・ESCが、それぞれ独立してガイドラインを発表した。これらのガイドラインにおいても、NT-ProBNPや尿中アルブミン/クレアチニン比、血管バイオマーカの有用性が明示されている。本ランチョンセミナーでは、自治医科大学が実施している全国Coupling研究で初めて明らかになった最新知見を発表し、その臨床的意義と高血圧診療における複合血管機能検査の位置づけを再考する。

超音波検査

超音波検査装置

超音波検査装置